国際性やリーダーシップを育むリベラルアーツ教育を実践し、10学部を擁する立教大学様。最新鋭のCanvas LMSを導入し、2022年度より運用を開始されました。次年度からはすべての科目への展開を予定しています。
Zoom(オンライン会議)やTurnitin(提出レポートの剽窃チェック)など、今では高等教育の現場で必須ツールとなった各種アプリケーションをCanvas LMSに組み込んでいることはもちろん、学生や教職員がスムーズにeラーニングシステムを活用・業務管理できるようにするための大学独自のLMS拡張機能を開発されています。
一定の規模を超える組織で本格的なオンライン教育コース運営、あるいはリアル授業の支援システムとしてLMSを利用する場合、いかに優れた製品であっても汎用性を重視して設計されたソフトウェアでは不足する機能が出てきます。更にLMSの用途が宿題管理や自習中心とされていたものから、コース設計としてオンライン学習とリアル授業を組み合わせるブレンディッドラーニング、オンラインでもリアル授業参加でも自由に選択できるハイフレックス型授業、リアル授業の中で双方向コミュニケーションやメディア援用、確実な情報伝達のために授業支援ツールとして利用されるようにと様々な用途へ拡がってくると、LMSは教育プラットフォームのハブのような存在になってきます。LMS本来の機能だけでなく、特定用途専用の教育ツールや運用業務特化のカスタムアプリケーションが連携動作できることが求められます。
Canvas LMSは1EdTech Consortium(IMS Global Learning Consortiumから改名)が策定し、グローバルに広く普及している標準規格にしっかり適合しているため、同じく標準規格に適合する既存の様々な教育用アプリケーションや独自開発アプリケーションをLMS機能拡張として容易に統合できます。システム利用者には、あたかも完全に一体化しているように見えますが、Canvas LMS自体を改造する必要がないため、人気のオープンソース・ソフトウェア製品としての進化・改善の早さに取り残されることがありません。
また、立教大学様が目指す新しい教育プラットフォーム構築は、単に便利な最新LMSへの置き換えだけではありません。社会が大きく変わり始めている今、これから10年、次世代の大学環境を作り上げるために本質的な教育DXを実現する必要があります。LMSを教育・学習のフロントエンドとして全面的に運用することは利便性の追求だけが目的ではありません。ユーザ・インターフェースのシステム化により、学生や教職員、大学教育の現場に関わるすべての人達の活動データを分析することで、今までは優れた教師陣の勘に頼っていたようなところまで、工学的なアプローチで把握して発展させることが可能になります。少人数教育でしか実現できなかったような細やかなフォローアップも、データ分析により大規模な教育シーンでも可能になる未来が見えてきます。教育フロントエンドへのCanvas LMS導入をきっかけに、プラットフォームのバックエンドではLRS(ラーニング・レコード・ストア)、LA(ラーニング・アナリティクス)、ETL(データ抽出・変換・格納)、DWH(データ・ウェア・ハウス)環境の構築が始まっています。LMSデータに留まらず大学全体の活動情報や暗黙知を集約し、分析・活用できる仕組みの実現が期待されます。