これからのオンライン教育・学習活動を支えるために、LMS(ラーニング・マネージメント・システム)が備えていなければならない数多の要素を広くカバーしているCanvas LMS。利用者が親しみやすい直感的に操作できる画面UI(ユーザ・インターフェース)デザイン。インストラクショナルデザインの理論に沿ったコース運用を助ける各種教材管理機能の標準装備。世界中で次々に開発される新しい教育ツールを柔軟に組み合わせて構成できる、機能の拡張性に富んだシステム連携仕様。大きなワークロード(システム利用負荷)を難無くこなすことのできる、スケーラビリティに優位性のあるアーキテクチャ(システムの構造設計)。オープンソースソフトウェアとして設計情報が社会に開示されており、システム機能の動作仕様やデータ管理方法に関する高い透明性の確保。開発者と利用者が交流するコミュニティで醸造される、より良いLMSとなるように、みんなで発展させて行こうとする未来に対してポジティブな文化。これらの根本的なフィロソフィー、基本設計ポリシー、関係者の公平で透明なスタンス、ソフトウェアとしての品質と先進性、様々な知見が蓄積されていくコミュニティの存在等は、Canvas LMSが最高のeラーニング・エコシステムを育んでいくことができる理由です。今から新しくオンライン教育プラットフォームを作っていこうと考えるのであれば、これほど素晴らしいソフトウェアは他に見当たりません。まず最初にCanvas LMSを検討すべきです。
然しながら一方で、Canvasには他のLMSに比べて弱いところがあるのも事実です。日本国内における知名度の低さ?確かに、そうかもしれません。北米発祥のCanvas LMSは世界中で利用が進んでいますが、日本に限っては、昔ながらのMoodleや日本製の商用LMS製品が未だに主流です。でも、だんだんとCanvasも有名になってきています。本気でLMS選定をしようと調べると、皆さんやはり気付かれるようなのです。今ではCanvasが一番なんじゃないかって。次期LMS選定候補にCanvasを含めていない場合は、ちょっとリサーチ不足かも知れませんよ。(笑)ということで、知名度の低さは解消されつつあります。
それでは、日本語環境への対応度でしょうか?たしかに、海外製のソフトウェアの例に習い、ちょっと変な翻訳文言が表示されるところもありますね。致命的というほどではないですし、年々、日本語の翻訳も改善されているように感じます。それに、もし自分たちで構築しているCanvas LMSサイトであれば、日本語訳のカスタマイズも可能です。まあ実際のところ、翻訳文言の表示については、どのようなソフトウェアでも日本製を除くと似たようなものです。ただ、数年前まではCanvasの日本語データへの対応はお粗末であったことも事実です。日本語を含むデータ一括処理が行えない場合があったり、日本語PC端末の漢字変換操作で入力画面が誤動作したり、CSVデータをダウンロードしたら文字化けしてしまったりと、海外製ソフトウェアでは良くある話ですが、ちょっと難ありという部分がありました。でも、ここはオープンソースの良いところで日本から改善提案ができるのです。私達もCanvasの日本語環境への対応については、過去にいろいろ実装改善の提案をしてきました。もう最近は大丈夫ですね。時々ある、変な日本語をちょっと直していけば完璧ではないでしょうか。
さて、Canvas LMSの欠点とは何でしょうか。日本国内での普及は始まったばかりですが、ソフトウェアとしての完成度は非常に高いと思います。最新のLMS機能設計を知るためにも、インストラクショナルデザイン、アウトカムベースの教育学習という考え方をWebシステムに実装するとどうなるのか、来たる次世代のオンライン教育プラットフォーム、ラーニング・エコシステムがどのような形になっていくのか未来を把握するためにも、是非、皆さんにCanvasを試して頂きたいです。そのような部分にCanvasの弱点はありません。きっと間違いなく、世界最高峰・最先端です。
ITに親しんだ方(要するにシステムエンジニアやプログラマ、ITインフラ担当者のような専門家)が、Canvas LMSを使い始めると気付かれると思います。すごく、複雑なシステムであると。Canvasのごく基本的な機能を試すだけであれば、比較的簡単に利用できます。基本的なインストール手順は公開されていますので、それに従ってセットアップを行えば良いのです。でも本当のCanvasとしては非常にたくさんの構成オプションが存在します。各種機能のON/OFFで隠し機能と呼べるようなものが切り替えられますし、外部のWebサービスと連携させたり、Canvas自体の動作スタイルを変えたり、利用者に対する規定の動作を切り替えたり、結構重要なオプション選択が盛り沢山です。これらの情報は開発チームから個別に説明はされていません。つまり、本当に使いこなすためには、開発チームと同じくらいソースコードを読み込んで、Canvas LMSの仕様詳細を把握しないと自前運用は難しいのです。
ごく基本的な機能しか使わないから大丈夫、という方がいらっしゃるかも知れません。それでも落とし穴が待っています。Canvas LMSは日々改善が行われている最先端の教育ツールです。干乾びた骨董品のようなLMSではありません。新しい世界標準規格にもどんどん対応していきますし、一番大事なセキュリティ対策もバッチリ強化されていきます。一方でこれらの改良のメリットを享受するためには、当然ですがシステムのアップデートが必要になります。今の時代、何年も前にインストールした古い世代のCanvasを利用し続けるなど問題外であることは、どなたも異論が無いかと思います。しかし、これが難しいのです。WindowsやMacOSのアップデートのように簡単に処理できれば楽なのですが、この複雑なLMSはそんなに簡単に扱えません。もちろん、Canvasは透明性の高いオープンソースソフトウェアですから、アップデート方法が公開されています。しかし、これがクセモノで浅い理解で作業をすると命取りです。アップデート処理で何が行われているのか詳細に理解していないとシステム環境を壊してしまうのです。簡単にできると思いきや、途中で様々なエラーが発生してアップデート作業が中断されてしまったり、アップデートの過程で重要なデータ変更処理が行われず、後に不具合となったり、ということになります。CanvasはLMS界で随一のソフトウェアであると思いますが、メンテナンスの手間も1番かかるかも知れません。
という訳で、Canvas LMSの大きな欠点は維持メンテナンスの難しさ、です。ちょっと腕に覚えがあると考えて、自分でインストールして本格運用をしようとすると、とても苦しむことになると思います。最初のうちは良いですが(本来の機能・性能を出せていないはずなので、本当は良くありませんが)、そろそろシステム更新という段になって、にっちもさっちも行かなくなるということになってしまいそうです。
だからCanvas開発チームも、このような問題を解消するために世界に向けてクラウドサービスを提供していますし、私達も、特に日本国内向けに最適化した各種サービスをご提案しているのです。餅は餅屋ということなのですが、この美味しい餅の材料やこね方を理解しているお店は、実は世界でも本当に僅かです。