2020年の春、新型コロナウイルスの流行は全世界に大きな混乱を引き起こしました。ほとんど全ての業務活動が停滞する事態となりましたが、それは教育学習における分野で特に顕著なもので、皆様もご存知の通り、高等教育機関に限らず、あらゆる組織において今まで通りの教育学習活動を続けることが非常に困難な状況となりました。
日本国内の大学においても、本来は教室に集まって授業を受けるはずであった学生達は全員通学禁止となり、同じく教員の方々も容易にキャンパスへ立ち入ることは許されませんでした。外国からの留学生は安全のために母国へ帰された場合もあったようで、もはや日本国内に留まれませんでした。
しかし、このような状況であっても知識社会の成長の原動力である教育学習活動を止めることはできません。困難であるということで教育学習を停滞させれば、社会におけるその悪影響は計り知れません。
幸い現代ではオンライン教育ツールが発展しつつあり、教室での授業をある程度は代替することができます。既にLMSを導入していた組織では、全ての授業において、全員が自宅からPCやタブレット端末でオンライン教育システムに接続して指導・学習するというスタイルに切り替えて、この困難な状況を乗り切ろうとしています。
しかし、ここで大きな問題に突き当たります。今まで想定されていなかった規模の利用アクセスがLMS(ラーニング・マネージメント・システム)に集中し、多くの教育機関でオンライン教育システムの障害が発生しました。TV放送や各種ニュースでご存知の方も多いかと思います。これは当然のことで、今まではLMSを教室授業の支援ツールくらいにしか考えられていなかったものが、ここにきて全ての教育学習活動をLMSに載せてしまったため、既存のシステムに従来想定の数倍から数十倍の負荷が加わることになってしまったためです。
あらかじめ履修登録を行なった上でシステムを利用する形式が多いLMSのようなオンライン教育システムは、元々それほど利用負荷の増減が大きくありません。教育コースの使われ方も教材構成に基づく利用パターンが予想できるため、必要とされるサーバシステムの性能は予想し易いものです。そのような背景でしょうか、多くのLMS製品ソフトウェアは比較的小規模なワークロード(システムに加えられる処理負荷の大きさ)を前提とした設計になっているようです。
今回の世界的な大激変でオンライン教育の在り方も大きく変わることになりそうです。伝統的な教室授業を中心として、宿題管理や教材の事前配布などのための支援ツールとしてLMSを構成していた教育学習のスタイルは今後も有効ですが、それ以上に、いつでも全ての教育学習をオンラインに切り替えて続行できることが求められるようになります。LMSは教育学習におけるコンテンジェンシープランの重要パートを担う事になります。また、このような非常事態の授業を経験する事で、全ての人がオンライン教育方式のメリットを体感し、更なる改善に向けた工夫を始めることは間違いなく、LMSはあらゆるシーンで活用されるようになることが予想されます。
その結果として、今まででは考えられなかったような大きなワークロードを処理することが、これからのLMSには求められるようになるはずです。これは全く新しい未体験の世界です。それほどLMSに大きな負荷がかけられなかった時代に設計されたLMS製品で対処できるのでしょうか?そうは思えません。今年、2020年に突然現れた新しい時代に対応できるLMS製品は数少ないのではないでしょうか。非常に巨大なクラウドサービスを稼働させるために設計されたオープンソース・ソフトウェア製品であるCanvas LMSは、おそらくその最有力候補です。機能のマイクロサービス化による柔軟性の高さ等だけではなく、根本的に重要なスケーラビリティの面でも比較できるものが見当たりません。